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メイクアップにおける流行は、90%以上が服飾を中心とするファッションによって形成されると思う。しかし、時には『発明レベルの新素材』がメイクの流行を大きく左右することがある。ここ数年で最大の発明は、間違いなく偏光パール入りのアイシャドウであろう。中間調のカラーのそれは、均等に塗るだけでまぶたに凹凸を作ってしまう秀れものだが、今日お話したいことはそんな立派なものではない。なんと言うかな?”珍プレー”に近い話なのだ。
'80年代のバブル期を終えた頃、日本人女性は史上初めて(?)リップよりも暗い色のペンシルを使い始める。それは100年規模のメイクアップの欧米化上、当然の流れでも
あったし、海外でのブームとも合致していた。ところが、わずか2年後くらいに珍事は始る。
「カップにつかない」を売り言葉にカネボウ・テスティモのしかけた『落ちないルージュ戦争』は、資生堂・レシェンテが満を持して発表したパーフェクトルージュによってピークを迎えると同時に、流行にはっきりと影響を与えた。そのマットなリップは、ブラシに取って塗るだけで強い輪郭を作るため、リップペンシルが消滅した。そしてファンデーションの質感などまでを左右した・・・・・が、その戦争はあっさりと終わる。なぜなら、パーフェクトルージュはそのあまりのマットさ故に唇をカラカラにし、男性にそっぽを向かれてしまったからだ。そして、ここからが私が『珍プレー』と呼ぶ由縁である。それは、日本国内だけのメーカー間の意固地な戦争だったため、その終結と同時に、あっさりとリップペンシルが復活してしまったのだ。しかもただの復活ではない。海外では、’90年代半ばのスーパーモデルブームに向って一貫してラインが暗色化していたため、ナオミ・キャンベルの代名詞でもある(MACのペンシル・スパイスは空前のヒットとなった。)”戦前”よりも暗い(濃い)色となっていったのだ。つまり、その戦争は、本来ならば一貫して右肩上がりに濃くなっていったライン(ペンシル)のグラフをほんの1〜2年間分断したにすぎなかったのだ。
メーカー間の新しい質感開発戦争が、ファッションの流れを大いに分断(しかけた)この珍プレーは、私がメイクに長年関わってきた中でも、最も滑稽な思い出なのだ。
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